4.プログラミング上の注意事項

　本ライブラリを使って再生するときの注意事項を次に示します。

(1)アプリケーション作成上の注意

• 本ライブラリはCPUのDMAとタイマを使用します。本ライブラリ動作時は、CPUのDMA及びタイマは使用しないでください。

• PCM_Task を呼ぶ頻度は、最低でも、Vブランク割り込みの頻度(1回/16ms)以上にしてください。
  同じ音が2回なる場合は、PCM_Task を呼ぶ頻度が少ないことが考えられます。

• PCM_Task １回の呼び出しで処理する量の上限値を関数 PCM_Set1TaskSample で設定できます。これにより PCM_Task関数の負荷を安定させることができます。

(2)他ライブラリとの関係

• 本ライブラリは、ファイルシステム、ストリームシステム、DMAライブラリ、ADPCM伸張ライブラリを使用しています。これらのライブラリをリンクしてください。

(3)バッファの取り方

• 次に示すサイズを確保してください。

  ワークバッファ	：ワーク構造体のサイズ。
  リングバッファ	：最低 (セクタサイズ)*10 [byte]。セクタサイズの整数倍。 　CD-ROM XA Audio再生の場合は 1セクタ=2324バイト。 　それ以外の場合は 1セクタ=2048バイト。
  ＰＣＭバッファ	：4096*2 〜 4096*4 [sample/1ch]。
  ポーズ処理用ワーク	：最低 4096 [sample]。PCMバッファと同サイズが最適。

(4)シームレスブランチ

• PCM_EntryNext でシームレスブランチしたときは、PCMのボリュームとPANは前のハンドルと同じになります。

• PCM_EntryNext でシームレスブランチするときは、60分まで連続再生できます。それ以上の連続再生はできません。

• シームレスブランチするときは、アプリケーションプログラムでファイルの先読み処理をしてください。

• ファイルシステムを使用した場合は、シームレスブランチ機能は使えません。

• シームレスブランチはシングル再生中にしか行えません。マルチ再生中は実行できません。

(5)マルチ再生

• マルチ再生するときは、PCMストリーム再生番号を違う番号にしてください。

• CDにある複数のファイルを同時に再生するときは、ファイルインタリーブまたはチャネルインタリーブしてください。そのときは、ストリームシステムを使用してください。

• 同じファイルはマルチ再生できません。違うファイルを指定してください。

• マルチ再生は同時に4つまでできます。

• ADPCM圧縮のデータは1本までしか再生できません。

(6)ADPCM対応

• ADPCM伸張ライブラリ SEGA_ADP.LIB をリンクしてください。

• 初期化関数の次にADPCM使用宣言 PCM_DeclareUseAdpcm をコールしてください。

◆指定ADPCM形式の再生

• AIFF形式と全く同じ手順(同じプログラム)で再生することができます。ただし、AIFF形式の場合に比べてCPU負荷が大きくなることに注意してください。

◆CD-ROM XA Audio 形式の再生

• ライブラリは、サブヘッダ領域のコーディングインフォメーションから再生周波数、チャネル数(ステレオ/モノラル)を判断します。正しく記述されていることを確認してください。

• ストリームキーの設定は、ライブラリユーザが行います。

• リングバッファは、セクタサイズ 2324 byte の整数倍にしてください。

• PCM_SetInfo で再生情報を設定してください。

• CD_ROM XA Audio の再生では、ストリーム再生モード以外は使用できません。

• サンプルプログラム smppcm5.c を参考にしてください。

(7)関数の使用方法

• プログラムの先頭で PCM_Init を必ずコールしてください。

• VブランクIN割り込み内で PCM_VblIn を必ずコールしてください。

• PCM_Start はハンドルに対して、1回だけ実行できます。
  同じファイルを何度も再生したいときは、その都度ハンドルを生成してください。

• PCM_SetLoadNum、PCM_SetPcmStreamNo は再生を開始する前にコールしてください。

• PCM_CreateMemHandle で生成したハンドルは、必ず PCM_NotifyWriteSize で、リングバッファへのデータ供給量を通知してください。

• ポーズ機能を利用する場合、あらかじめ、PCM_SetPauseWork によりポーズ処理用ワークを指定しておく必要があります。このワークはハンドル毎に用意する必要はありません。
  このワークは、ポーズ・オン処理の中で一時的に使用される作業領域ですから、ポーズ・オン処理の直前に領域確保し、直後に領域解放しても構いません。

• CDブロックからリングバッファへのデータ転送方式デフォルトでは、CPUのDMAによりデータ転送を行います。
  PCM_SetTrModeCd により、プログラム転送、CPUのDMA、SCUのDMAのいずれかを指定できます。
  PCM_SetTrModeCdは、ハンドル作成後、最初にタスク関数をコールする前にコールしてください。

• CD-ROM XA Audio の再生をする場合は、必ず PCM_SetInfo で再生情報を設定してください。

(8)SaturnPCM形式について

　(a) データ作成

• 変換ツールAIF2SAPによりAIFF ファイルを変換し作成します。

［書式］

aif2sap aiffile [sapfile]

［入力］

aiffile：AIFF ファイル名
sapfile：SaturnPCM ファイル名

［機能］

AIFF ファイルを SaturnPCM ファイル（ SAP ファイル）へ変換する。
SaturnPCM ファイル名を入力しなかった場合、AIFF ファイル名のベース名に拡張子「SAP」を付加したファイル名で SaturnPCM ファイルが作成される。

　(b) データフォーマット

• 非圧縮ＰＣＭである。

• セクタバウンダリ構造をとる。

• 先頭 2048 byte はヘッダ領域。以後、4096 sampleを単位に、Ｌチャネル、Ｒチャネルの順にＰＣＭデータを配置する。

　(c) 使用方法

• SaturnPCM 形式には、ファイル再生モード（ファイルシステム使用）とストリーム再生モード（ストリームシステム使用）の２種類の再生モードがあります。

• 初期化関数の次に、ファイル再生モードであれば SaturnPCM 使用宣言を行う関数 PCM_DeclareUseSapGfs を、ストリーム再生モードであれば関数 PCM_DeclareUseSapStm をコールすることで SaturnPCM 形式が使用可能となります。

• SaturnPCM 使用宣言後は、AIFF 形式と同じ手順で使用できます。

• 具体的な使用方法は、サンプルプログラム smppcm41.c（ファイル再生モード）、smppcm21.c（ストリーム再生モード）を参照してください。

　(d) 使用資源に関して

• CDバッファからサウンドメモリへのデータ転送をSCU-DMA（チャネル０）により行うようデフォルト設定されています。データ転送方式は、関数 PCM_SetTrModeCdにより、プログラム転送、CPU-DMA、SCU-DMAのいずれかを指定できます。

　(e) ワークエリア

• SaturnPCM 形式は、リングバッファを必要とせず、代わりに拡張ワークバッファが必要と なります（拡張ワークバッファのサイズは2048 byte）。

　(f) 制限事項

• SaturnPCM形式と、AIFF / ADPCM / CD-ROM XA Audio 形式を同時に使用することはできま せん。SaturnPCM 使用宣言後は、再生するＰＣＭファイルはすべて SaturnPCM 形式が対象となります。