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SCSPユーザーズマニュアル/4.3 音源部レジスタ

 今までは演算により"MDXSL"および"MDYSL"を求めてきましたが、変調をかける側(モジュレータ)とかけられる側(キャリア)のスロット番号から、表4.16のパラメータ対応表を用いて、"MDXSL"および"MDYSL"の値を導き出すことができます。
 以下にパラメータ表を用いながら、図4.33の"MDXSL"および"MDYSL"を求めていきます。

(1)スロット0に設定するパラメータ
 スロット0は、セルフフィードバック構成をとっているため、キャリアスロット番号およびモジュレータスロット番号が"00"になります。この時の"MDXSL"および"MDYSL"はパラメータ表から、

最新サンプル ..... 20H
過去のサンプル .... 00H

 となります。先にも記述したように、セルフフィードバックの場合同世代を入力に用いますと発振する可能性があるので、この使用法は避けてください。

(2)スロット2に設定するパラメータ
 スロット2は、複数入力の構成をとっています。
 まずスロット1を入力とした時ですが、キャリアスロット番号は"02"、モジュレータスロット番号が"01"になります。この時の"MDXSL"および"MDYSL"はパラメータ表から、

最新サンプル ..... 1FH
過去のサンプル .... 3FH

 となります。

 次にスロット0を入力とした時ですが、キャリアスロット番号は"02"、モジュレータスロット番号が"00"になります。この時の"MDXSL"および"MDYSL"はパラメータ表から、

最新サンプル ..... 1EH
過去のサンプル .... 3EH

 となります。

(3)スロット3に設定するパラメータ
 スロット3は、スロット2の出力を入力としています。従って、キャリアスロット番号は"03"、モジュレータスロット番号が"02"になります。この時の"MDXSL"および"MDYSL"はパラメータ表から、

最新サンプル ..... 1FH
過去のサンプル .... 3FH

 となります。

表4.16 MDXSL・MDYSLとスロットとの関係

MDXSL・MDYSL キャリアスロット番号 パラメータ値 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (SAMPLE) 最新 過去 モジュレーションスロット番号 SLOT 00〜31 20H 00H 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 21H 01H 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 22H 02H 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 23H 03H 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 24H 04H 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 25H 05H 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 26H 06H 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 27H 07H 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 28H 08H 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 29H 09H 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 2AH 0AH 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 2BH 0BH 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 2CH 0CH 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 2CH 0DH 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 2EH 0EH 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 2FH 0FH 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 30H 10H 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 31H 11H 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 00 32H 12H 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 00 01 33H 13H 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 00 01 02 34H 14H 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 00 01 02 03 35H 15H 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 00 01 02 03 04 36H 16H 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 00 01 02 03 04 05 37H 17H 23 24 25 26 27 28 29 30 31 00 01 02 03 04 05 06 38H 18H 24 25 26 27 28 29 30 31 00 01 02 03 04 05 06 07 39H 19H 25 26 27 28 29 30 31 00 01 02 03 04 05 06 07 08 3AH 1AH 26 27 28 29 30 31 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 3BH 1BH 27 28 29 30 31 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 1CH 3CH 28 29 30 31 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 1DH 3DH 29 30 31 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 1EH 3EH 30 31 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 1FH 3FH 31 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
MDXSL・MDYSL キャリアスロット番号 パラメータ値 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 (SAMPLE) 最新 過去 モジュレーションスロット番号 SLOT 00〜31 20H 00H 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 21H 01H 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 00 22H 02H 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 00 01 23H 03H 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 00 01 02 24H 04H 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 00 01 02 03 25H 05H 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 00 01 02 03 04 26H 06H 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 00 01 02 03 04 05 27H 07H 23 24 25 26 27 28 29 30 31 00 01 02 03 04 05 06 28H 08H 24 25 26 27 28 29 30 31 00 01 02 03 04 05 06 07 29H 09H 25 26 27 28 29 30 31 00 01 02 03 04 05 06 07 08 2AH 0AH 26 27 28 29 30 31 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 2BH 0BH 27 28 29 30 31 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 2CH 0CH 28 29 30 31 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 2DH 0DH 29 30 31 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 2EH 0EH 30 31 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 2FH 0FH 31 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 30H 10H 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 31H 11H 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 32H 12H 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 33H 13H 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 34H 14H 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 35H 15H 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 36H 16H 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 37H 17H 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 38H 18H 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 39H 19H 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 3AH 1AH 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 3BH 1BH 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 1CH 3CH 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 1DH 3DH 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 1EH 3EH 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 1FH 3FH 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

※表の見方
 まずキャリア側のスロット番号を見つけて、それに入力されるモジュレータのスロット番号を見つけます。それに対応するサンプル数を横の欄から見つけます。

 次に"MDL" ( Modulation Level ) について説明します。
 "MDL"は、変調入力XおよびYに加えられた変調信号による変調度(変調にかかり具合)を設定するパラメータです。この値を大きくすると周波数変調のかかり具合が深くなり、小さくするとかかり具合が浅くなります(図4.32)。

図4.32 MDL変調度

 "MDL"設定値による変調度を説明します。表4.15は"MDL"の設定値により、変調度が±nπになることを示しています。
 変調入力XおよびYに入力されたサウンドスロットの各データを、平均化演算部によって平均化します。Xに入力されたデータをXD、Yに入力されたデータをYD、平均化演算部の出力をZDとすると、以下の式のように表すことができます。


ZD = ( XD + YD ) ÷ 2

 このZDが"MDL"によってレベル調整を受け、スロットのアドレスポインタ(位相加算器)に送られます。

図4.33 波形読み出しアドレスによる最大変位

 FM音声合成は、変調波形を加えない場合、時間−位相関数はリニア(線形)になります。ただし変調波形を加えると、変調波形分の変位が加わるため、リニアであった時間−位相波形がノンリニア(非線形)になります。 この変位が最大になるのは、ZDが±最大値をとる場合になります。MDLの変調度は、波形データ(サイン波)を1周期=1Kワードにした状態で、ZDが±最大値をとった時の波形アドレスの変位(最大変位)を表しています。

表4.10 レジスタ設定値によるアドレス最大変位
MDL[3:0]
 0〜4 
  5  
  6  
  7  
  8  
  9  
  A  
  B  
  C  
  D  
  E  
  F  
アドレス最大変位±
0326412825651210242048409681921638432768

 表4.16と表4.10を比較すると、π=512(MDL=AHの時)という関係が得られます。表4.16では波形データ(サイン波)を1周期=1Kワード(1024ワード)と考えていますが、数学的な表現方法では波形1周期分の長さを2πと定義しています。 従って今回のFM音声合成では、1周期=1Kワードのサイン波を使用しているので、最大アドレス変位の512は、πで表すことができます。πを使用した表現方法は、波形データの1周期が1Kワードの時のみ有効なので、 その他の場合は、表4.10のアドレス変位による表現方法を使用してください。

 FM音声合成を行なう場合は、波形データを3周期分持つようにしてください。その理由は、アドレス変位が生じることに起因しています。 SCSPハードウェアでは、1Kワードアドレス変位分(MDL="AH")までは波形データをメモリ上に置いておく必要がありますが、1Kワードを越えるものに対してはハードウェアで自動的にクリッピング処理を行なうので、 1Kワードより多くの波形データを余分に置いておく必要はありません。

図4.34 FM合成時のアドレス変位

 FM音声合成を行なうときは、アドレス変位分だけ余計にデータを置いてください。基本的に±πであれば、"SA"以前、"LEA"以後にπ分の波形データを設定することにより、動作的には問題はありません(PLFOを使用しない場合)。 しかし図4.34のように3周期分のデータを置いた方が、好ましい設定方法といえます。

※クリッピング処理について
 これは先に記述したアドレス変位に関係します。アドレス変位の範囲は、"MDL"によって最大±32768アドレス変化するので、基本波形1周期(1Kワード)の前後に、それぞれ32周期(32Kワード)分の波形データが必要となり、 全体で65Kワードもの多量のメモリが必要となります。
 そこでSCSPでは、変位が1Kワード越えるとクリッピング(越えないようにする処理)を行ない、変位を0に戻しています。これにより、いくら変位をしても全体で3Kワードの波形データがあれば、十分に対応できるようになっています。
 また変位用に用意された有効アドレスビットが10ビットであることから、クリッピング処理を行なうことになりました。

図4.35 クリッピング処理時のウェーブデータ

 図4.35のように、変位後に予備波形を越えたとしても、位相が2πを越えた時点で0に戻します。

 次に、SCSPでのFM構成(アルゴリズム)の組み方について説明します。SCSPのスロットは、基本的に2入力、1出力の構造になっているので、ひとつのスロットに対して接続することができる (変調をかけることができる)スロット数は、最大2個までとなります。

図4.36 スロットの接続数

 図4.36のように、2つまでならば変調は可能です。また、サウンドスタックから変調データ(ソース)を持ってくるという点を考慮すると、SCSPでは図4.37、図4.38、図4.39、図4.40のようなFM構成を組むことができます。
 (図4.37はセルフフィードバックがかかったスロットに、さらに他のスロットで変調をかける構成、図4.38は複数スロットを含んだ多段フィードバック、図4.39は多段フィードバックとセルフフィードバックを組み合わせた複合型フィードバック、 図4.40は多段フィードバックをかけた各スロットに別のスロットで変調する複合変調タイプを表しています。)

図4.37 セルフフィードバック変調

図4.38 多段フィードバック
図4.39 複合フィードバック

図4.40 複合変調

 図4.41および図4.42に基本となるFM構成の具体例を示します。FM音声合成を行なう上での参考にしてください。各スロットの上側の2本は変調入力、下側の線はスロットの出力を表します。
 また、図4.41および図4.42ではスロット同士の接続を1本しか行なっていないように見えますので、実際には破線の部分も接続するようにしてください。

図4.41 FM構成アルゴリズムパターン1

図4.42 FM構成アルゴリズムパターン2

 FM音声合成において最上段のスロットは、セルフフィードバックがない場合には、何も接続されるものがありません。このような場合は、"MDL"に0B"〜"4B"の値を設定し、変調度を"0"に設定してください。 これにより、変調入力を"0"に設定することができます。

※最上段スロットの定義
 最上段スロットとは、アルゴリズムの各タワーの1番上のスロットを指します。図4.43では、S0のタワー、S1,S2のタワー、S3,S4,S5,S6のタワーの3つがあります。これらの最上段スロットは、S0,S1,S6となります。

図4.43 7スロット FM構成


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