２．基本事項

2.1　用語と記号

　（１）MPEGデバイスの構成

ＭＰＥＧデバイス─┬─ＭＰＥＧデコーダ─────┬─ＭＰＥＧ／Ｖｉｄｅｏデコーダ
　　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　└─ＭＰＥＧ／Ａｕｄｉｏデコーダ
　　　　　　　　　├─ＭＰＥＧフレームバッファ───フレームバンクの集合
　　　　　　　　　└─ＭＰＥＧセクタバッファ────ＭＰＥＧセクタの集合

　（２）用語の定義

　使用する用語の定義を表2.1に示す。

MPEG（エムペグ）

Moving Picture Experts Groupの略で、ISO/IEC JTC1/SC29/WG11委員会を指す。規格としては動画用高能率符号化の国際標準です。

MPEGバッファ

MPEG/Video LSI が管理しているメモリ領域。

MPEGフレームバッファ

デコードされたイメージデータが格納される領域。
複数のフレームバンク（面数）で構成される。

出力モード	解像度	面数
NTSC通常解像度	352×240	４
PAL通常解像度	352×288	３
NTSC高精細静止画	704×480	１
PAL高精細静止画	704×576	１

フレームバンク

MPEGビデオストリームの１ピクチャ分のイメージデータが展開される領域。

フレームバッファウィンドウ

MPEGフレームバッファに対して設定される矩形領域。
この領域が出力対象となる。

ディスプレイウィンドウ

MPEG動画が出力されるディスプレイ（ＴＶモニタ）上の矩形領域。
フレームバッファウィンドウのデータが出力される。

イメージデータ

MPEGビデオストリームをデコードして得られる、１画素あたり24ビットのフルカラーデータ。
ホスト領域へは15ビットのカラーデータとして転送される。

イメージデータウィンドウ

MPEGフレームバッファ内に定義される、イメージデータをアクセスするための矩形領域。

輝点

ディスプレイ上の最小の表示単位（１個の点）。

画素

画像データの表示単位。複数の輝点で構成される。
通常解像度：２×２輝点、高精細解像度：１×１輝点

システムレイヤ

ビデオとオーディオが同期・多重化されたMPEGストリーム。
（マルチプレックス ストリーム）

ビデオレイヤ

ビデオデータだけで構成されるMPEGストリーム。

オーディオレイヤ

オーディオデータだけで構成されるMPEGストリーム。

ピクチャ

１枚の画面データ。

Ｉピクチャ

イントラ符号化画像。フレーム内の情報だけで符号化される。

Ｐピクチャ

順方向予測符号化画像。過去のI, Pピクチャからの予測によって符号化される。

Ｂピクチャ

双方向予測符号化画像。過去または未来のI, Pピクチャからの予測によって符号化される。

Ｄピクチャ

DC符号化画像。DC成分だけをもち、サーチ用に使われる。

GOP

少なくとも先頭に１枚のＩピクチャを含む、複数ピクチャの集合。
GOP単位でランダムアクセスが可能です。
通常0.5秒（15枚）程度のピクチャから構成される。

フィールド

１垂直走査区間の表示画面。（NTSC：60Hz, PAL：50Hz）

フレーム

１枚の表示画面。通常のTVでは２枚のフィールドで構成される。

インタレース

飛び越し走査方式。偶数フィールドと奇数フィールドの２枚のフィールドで１表示画面を構成する。

ノンインタレース

順次走査方式。１枚のフィールドで１表示画面を構成する。

PSC(フレームバッファスタートコード)

ピクチャ層の開始コード。（00000100H）

SHC(シーケンスヘッダコード)

ビデオシーケンス層の開始コード。（000001B3H）

SEC(システムエンドコード)│ │

システムレイヤのストリーム終了を意味するコード。 (000001B9H)
iso_11172_end_codeとして規定されている。
※SECは、シーケンスエンドコード（000001B7H）の略号として使う場合もあるが、本書ではシステムエンドコードの略号とする。

タイムコード（TC）

シーケンス先頭からの時間を示す情報。

タイムスタンプ（PTS）

各フレームの再生出力の時刻管理情報。
PTSに対して、復号時刻管理用のタイムスタンプをDTSと呼ぶ。

テンポラルリファレンス（TR）

GOPの中の表示順を示す情報。GOPの先頭でリセットされる1024の剰余値。

VBVバッファ

MPEGビデオストリームをデコードするために用いる領域。
MPEGバッファ内に確保される。

STDバッファサイズ

システムターゲットデコーダで規定されるバッファサイズ。再生開始の前に、このバッファサイズ分のデータを確保する必要がある。

WBC

デコードバンクおよび表示バンクを管理するブロック。
表示待ち（デコード済み）MPEGフレームバッファの内容を指す。

ポーズ

デコードを停止してください。結果的に画面出力も停止する。

フリーズ

画面出力を停止してください。デコード動作は続行する。

デコード同期信号（DSYNC）

ホスト同期再生時に、ホストからデコーダに与えるデコード指示。
デコードタイミングとしてVSYNCの代わりに送出する。

MPEGセクタ

MPEGセクタバッファモードにおいてMPEGバッファをアクセスするためのデータの単位。（2048バイト）
MPEGセクタバッファは、MPEGセクタの集合として構成される。

MPEGセクタ位置

MPEGセクタバッファ内のMPEGセクタの位置。
０〜（全MPEGセクタ数−１）の値を取る。
MPEGセクタは、MPEGセクタ位置をキーにしてアクセスする。

　（３）記号・略号の一覧

表2.2　記号・略号の一覧

記号・略号	意　　味	説　　明
B	Bidirectionally predictivecodedpicture	双方向予測符号化画像
D	DCcodedpicture	DC符号化画像
DTS	DecodingTimeStamp	復号タイムスタンプ
GOP	GroupOfPictures	ピクチャのグループ
I	Intracodedpicture	イントラ符号化画像
P	Predictivecodedpicture	順方向予測符号化画像
PSC	PictureStartCode	ピクチャスタートコード
PTS	PresentationTimeStamp	再生出力タイムスタンプ
SEC	SystemEndCode	システムエンドコード（本書での略号）
(SEC)	(SequenceEndCode)	（シーケンスエンドコード）
SHC	SequenceHeaderCode	シーケンスヘッダコード
STD	SystemTargetDecoder	システムターゲットデコーダ
VBV	VideoBufferingVerifier	ビデオバッファ検証器
WBC	WriteBufferControl	表示待ちMPEGフレームバッファ
actst	MPEGactionstatus	MPEG動作ステータス
vcnt	VSYNCcounter	動作区間カウンタ
pict	pictureinformation	ピクチャ情報
stat_a	MPEG/Audiostatus	MPEG/Audioステータス
stat_v	MPEG/Videostatus	MPEG/Videoステータス
mpstat	MPEGstatusinformation	MPEGステータス情報
mptc	MPEGtimecode	タイムコード
mpcon	MPEGconnectparameter	MPEGデコーダ接続先パラメータ
mpstm	MPEGstreamparameter	MPEGストリームパラメータ
mpvef	MPEGvideoeffect	画面特殊効果パラメータ

2.2　MPEG-1標準規格

　MPEG-1標準規格については、下記の規格書を参照のこと。

表2.3　MPEG-1標準規格一覧

項　目	規　格	規　格　名
MPEG-1標準規格	ISO/IEC 11172	1993 Information technology - Coding of moving pictures and associated audio for digital storage media up to about 1.5 Mbit/s
MPEG/Systemレイヤ	ISO/IEC 11172-1	同上 - Part1:Systems
MPEG/Videoレイヤ	ISO/IEC 11172-2	同上 - Part2:Video
MPEG/Audioレイヤ	ISO/IEC 11172-3	同上 - Part3:Audio